若い頃に私が思っていた理想の医師像について、お話しさせてください。
世間的には優しい医師が求められる風潮があります。
ただ、私が若い頃にはこの風潮に対して、疑問を頂いていました。
『あの先生は優しかったけど、手術で後遺症が残ってしまった。』
『あの先生は優しかったけど、自分の家族は助からなかった。』
これでは本末転倒です。
医師は人の命を救うプロフェッショナルとして、人間性は二の次、とにかく自分の腕を鍛えることに専念する。
医者に求められる力は実力のみ、それが真理であると思っていました。
このような考えを持ちながら、
私は2015年からECMOを専門として、ECMOに関しては誰にも負けないように勉強や経験を積んできました。
無口で無愛想だけど、腕前はピカイチ。
そんなECMOのスーパードクターに憧れていました。
私がECMOのスーパードクターになれたかはわかりませんが、間違いなく院内で最もECMOのことを理解している医師にはなれました。
ECMOの患者が院内にいるときは、私が救うと意気込んで、家にも帰らずに診療をしていました。
しかし、私一人ではECMOの患者を救えないことに気づいたのです。
こんなに勉強してきたのに。。。こんなに経験を積んできたのに。。。
看護師が患者の変化にいち早く気づき、臨床工学技士がECMOの機械を管理し、理学療法士が患者の身体機能を回復させる。
そして、今回のECMOカーやストレッチャーを作ってくれた会社の方々など、医療従事者以外の方々にも助けて頂き、ECMO患者は救われていきます。
ECMOnetや行政の協力によって、ECMO患者が福岡大学に集約化され、我々の経験値は高くなり、生存率が高くなる。
『ECMOはチーム医療』という言葉をよく聞くようになりました。
まさにその通り。
最近の医療はどんどん高度化していき、医師一人での治療は限界があります。
様々な職種の医療従事者だけでなく、医療関係者以外の方々との連携もあって、一人の患者を救命していきます。
もはや、スーパードクターは不要なのかもしれません。
多くのプロフェッショナルを巻き込んだ上で、同じ方向を向かせるリーダーシップが最も医師に求められる要素ではないでしょうか。
コロナ禍で、私が福岡大学のECMOに関して、現場のリーダーを任されることが多くありました。
私が心がけていたことは以下です。
・自身は一歩引くこと
・メンバーを承認すること
・メンバーのプロフェッショナルを活かすこと
・自分のステージを高め、メンバーを引き上げること
・メンバーを引き上げたら、自分は更なる高みのステージに行くこと
まず、リーダー自身は完璧でない、自分より優れたメンバーがいることに気づかなければいけません。
(プライドが高くなればなるほど、なかなか気づけなくなります。)
リーダーが人を動かし、プロフェッショナルたちが同じ方向を向けば、とてつもないエネルギーが生みだされます。
どんなに優秀であっても、一人のスーパードクターが最高のチームに勝てるわけありません。
私が陥ってしまった過ちに、皆さんは陥らないようにしてください。
【参考書籍】
リーダーこそ読むべき一冊。人生変わります!!
読みやすい漫画版。
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